夫婦で守り続ける、家庭に根付く保存食文化
― 清水さんご夫妻のニシンの麹漬けづくり
高島市朽木に暮らす清水勝徳さん、昌子さんご夫妻のご家庭では、毎年冬の訪れとともに「ニシンの麹漬け」を仕込むのが恒例行事となっています。その味の原点は、清水さんが若い頃にお母様のそばで手伝いながら自然と身につけた記憶。暮らしの中で育まれた手仕事が、今ではご自身の工夫を加えながら、家庭の大切な味として受け継がれています。
素材にこだわる、やさしい麹漬けの味わい
使われる大根は、高島市内で無農薬栽培されたもの。「安心して食べてもらいたい」との思いから塩もこだわって取り寄せ、ひとつひとつ丁寧に仕込まれます。お母様から受け継いだ「秘密のレシピ」には、生臭さが苦手な人でも食べやすい工夫が詰まっており、実際にご近所でも評判。「毎年この味を楽しみにしている」という声が聞かれるほどです。

夫婦二人三脚でつくる家庭の味
仕込みは奥様が担当し、その後の温度管理や発酵の進み具合の見守りは旦那様へバトンタッチ。役割を分担しながら、二人三脚でつくりあげるニシンの麹漬けは、ご夫妻の絆と家庭のぬくもりが込められた味です。 「ふたりでやっているから続けられるんです」という言葉には、日常の中で発酵食づくりを大切にしてきたご夫婦ならではの思いがにじみます。

鯖のなれずしやへしこも手づくりで
ニシンの麹漬けだけでなく、清水さんご夫妻はへしこや鯖のなれずしなどの発酵食も手づくりされています。特に鯖のなれずしは、「より多くの人においしく食べてもらいたい」と工夫を重ねてきた一品で、約2年前には90匹もの鯖を漬けたことがあるというエピソードも。食べやすく仕上げられた味は、なれずしに苦手意識がある人からも好評だそうです。


地域にふるまわれる「清水さんの味」
近所ではこうした発酵食を家庭で作る人が減るなか、ご夫妻の味は地域の方々にも振る舞われ、多くの人に親しまれています。一度味わうと、その人気の理由がわかります。

さらに旦那様は猟師として、鹿や猪を捕獲し、ご自身で捌いてスライスまで行う一面も。ご夫妻はあまり召し上がらないとのことですが、「娘が好きだから」と今も加工を続けているそうで、その姿勢からは家族を思う温かさが感じられます。

「みんなが喜んでくれると嬉しいから」そう語る清水さんご夫妻の言葉は、やさしさと人を思う気持ちに満ちていました。受け継いだ味を守りながら、素材や手間を惜しまず丁寧に作り続ける姿は、高島に息づく暮らしの文化そのもの。家庭の中で自然と育まれてきた発酵食文化は、これからも人と人をつなぐ温かい営みとして、地域に根づいていくことでしょう。